黒沼 英之 『イン・ハー・クローゼット』のこと

黒沼英之くんのアルバムがめっちゃいいのです。


イン・ハー・クローゼット

イン・ハー・クローゼット

繊細で切なく、眩い歌声で日常を描き出すシンガー・ソングライター黒沼英之、ファーストアルバムリリース。
まるで、目の前にいるかのように語りかけてくるその歌声は、一度聴いたら耳から離れることはない。


黒沼英之くんは、若干23歳のシンガーソングライター。ピアノ弾き語りで感情を吐露するように歌う姿が、神聖に見えるし、また痛々しくもみえる、線の細い、きれいな男の子。何度かライブを見に行った印象では、彼の歌声はとてもつよくて痛くて、自分の存在を歌と対等に置くために、がむしゃらに喉を震わせているようにも見えて、その壊れそうな世界観もいいんだけど、なんとなく胸がしめつけられるような思いもあって、勝手に、もっとニュートラルに歌を愛してみてもいいんじゃないかな〜なんて思ってましたが。


しかしね、アルバムがすっごくよくてね〜。思いました、あの痛さは、単純にマイクの問題だったんじゃないかと。コンプとか解像度の問題じゃないかと。またはライブだから感情があふれざるを得ないのかもしれない。魂をかたまりにして放出せざるを得ないのかもしれない。とにかく、アルバムの黒沼くんの声は、歌と相思相愛で空気をぬりかえていくやさしさに満ちている。まず録音とミックスがいい。1曲聴いて、すぐスタジオのクレジットをチェックしちゃったもんね。彼の音楽は、曲がいいのはもちろんながら、彼の声、そのものが唯一無比の大きな才能であると思うんだけど、アルバムにはその、歌声の奥深さがちゃんと真空パックされてる。たったひとりの心に語りかけてくるような小さな声も、オーケストラのストリングスのように広がって響いていく迫力ある声も、歌の奥にひそむ彼の祈りのようなものも、ものすごい解像度の高さで瓶詰にされている。そこには振動を纏う埃や水分や分子も鳴っている。黒沼くんの歌声が、空気のなかに共存しているのだ。そのとき彼は、歌そのものとして、空間を覆う。



黒沼くんが曲をつくり始めたのは15歳のころで、なかでも名曲「やさしい痛み」はけっこう昔に原型ができていたとのこと。つまり、もうずっと歌ってきた曲。で、彼はこう歌う。

やさしい痛みを僕におくれ もう一人で泣かなくていいから


わたしは、この一節は、黒沼くんの覚悟だと思ってる。彼が音楽となって、痛みも悲しみも受け止めてあげようという、意志表明じゃないかと思ってる。対人間として、誰かを救おうなんて、おごった考え方だし、例えもっとも愛する人だとしてもそんなことは難しい。もちろん音楽が誰かの心を救うということが幻想であるということもわかってる。でも、かりそめの一瞬でも、心を受け止める歌になろう、誰かのそばにいよう、と、祈りながら、誠実に、彼は歌い続けるのではないか、と思うのです。

その歌に僕はなりたい 心をなでてあげたい
記憶や隙間を見つけて その傷を形にしたい

そんな歌に僕はなりたい



秋の夜長のひとりぼっちの夜を彩る作品です。おやすみソングにもおすすめ〜。


黒沼英之 1st one-man live「イン・ハー・クローゼット」


2012年11月13日(火)東京都 WWW
OPEN 19:00 / START 19:30


全席自由 前売り:¥2,500-(D別) 当日:¥3.000-(D別)
※座席数に限りがあり、席が無くなりましたら、
立ち見になります事を予めご了承下さい。


チケット発売日:2012年10月6日(土)

チケットぴあ  【Pコード:181-523】
ローソンチケット【Lコード:72959】
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(問) 03-5458-7685 渋谷WWW