ロロのワークショップのこと

「父母姉僕弟君」のことを思うといまでも自動的に涙が出てくるぐらい強烈に情熱的に大好きなロロがワークショップを行うというので行ってきた。行ってきてしまった。生まれたときからひとりで絵を描いてることが何より大好きだったわたしが…。思えば、幼稚園でスカートめくりが流行ったときもまっっったく相手にされず、「おれも男にスカートめくられて“キャー!”とか言ってみてえよ」とか思ってたところ、奇特な男児が我がスカートをめくってくれた、にも関わらず自分という対象を他の子と同様に扱ってもらえた嬉しさに感動し、何も言わずただただ相手の目を見つめるという愚行をおかし、それから二度とスカートめくりをされることはなかった…というぐらい日陰の者である自分が、人前で演技なんてー!演技なんてー!キャ→(バンド)



といいつつ、終わってみるとめちゃくちゃおもしろかったです。



受付を済ませるとみんな運動着に着替えている。この時点でプレッシャー。じ、じぶん着替えとか…用意してないんですけど。しかもみんな準備体操的なことを行ってる。開演前のステージでよくみるやつだ。なに、この空気…こんな本格的な、そんな、そんなの…とか思いながらなんとなく自分もやってるフリをしてしのぐ。時間になり、三浦くんが「僕がロロで脚本と演出をやっている三浦です」と自己紹介したのち「それぞれ自己紹介と、最近みておもしろかったもの、なんでもいいんで教えてください」という、「僕は人が好きなことを話してるの見るのが好きなので」と、いかにも三浦くんらしい理由!



そのあと「これはチェルフィッチュの岡田さんの言葉だけど」と、演劇では棒をバットと言ったら棒はバットになる、といい、自分は脚立が好きだから、脚立をよく使う、脚立を山に例えたりする。すると脚立は一瞬だけど「山」にみえるときがある。「その、お客さんの想像力の伸び方が好きなんです」といい、ロロではボーイミーツガールの劇をよくやっていること、それは「僕は舞台で役者が“好きだ”と言ってるのを見るのが好きだから」というのと、「誰かを“好きだー!”と思う気持ちと、脚立を山だと信じる気持ちが重なるような気がするから」と説明。自分はロロのこういう、誰かや何かを「信じる!」でできてるところが大好きです。



そんなこんなで最初は幼馴染のシチュエーションで告白劇。これはできるだけ演技でなく、自然に、自分の心地よいように、という指示。さっそく土佐有明さんとのペアなった(!)ので、ふっつーに雑談してしまった(笑)。はずい。他のかたがたはちゃんと告白までの雰囲気作りと告白をばっちし決めてました。
次に映像をみて完コピ。題材はラブジェネレーションのラストシーン。




この松たか「手ぇ出して」からキムタク「できるわけないじゃん」まで



いやー、松たか子かっわええのうー。松たか子かわええのうー。こんどは自分を捨てて、自分の演技などせず、役者の動作、目線、声のトーンをできるだけ完璧に真似する。このとき「いい役者は耳がいいから、演出家の求めるものをすぐにかたちにできる」といったことを話されてました。“絶対音感を持つ”が自慢のわたくしは三浦くんの言う「声のトーン」だけを猛烈に完コピ。そしたら「声のトーンはかなりできてる」と褒められたん♪てかそもそもモノマネって得意です。
しかし見てると、最初は慣れなくってもやっていくうちにみんなどんどん上手になっていく。タイミングもそうだし、声のトーンもそうだし、表情もどんどん吸収してってすごいなぁと。あとやっぱり役者さん目指してる子は声がいいですね。圧倒的に通る。最初の一音発しただけで空気が違うんだよなぁ。ああいうの、見れて本当に楽しかったなぁ。



次にやったのは、アニメの完コピ。題材は「うる星やつら〜恐怖のセントバレンタインデー」。




これの2:11〜「うぅ、行ってくる!」から2:55「おいちょっとー!」まで



かわええのー、テンちゃんかわええのー。アニメだから人間的じゃない動きがあるし、セリフもちょっと大げさな表現をしてるけど、そういう部分も完璧に真似する。これは、女の子たちがみんな超絶かわいかったですねー。特に最後に「うぅぅ…やったぁーーーーーー!!!」て走り去るとこね。あと男の子たちはテンちゃんの飛び方や落ち方、そして大口を開けて止まってるとこまで完璧にコピーしてて、まじで超笑った。超おもしろかった。三浦くんもゲラゲラ笑ってたけど(笑)。


で、最後に、上記の「うる星やつら」を、アニメの動きを維持したまま、自分の声や言葉で演技する。これは、演技しようとすると身体が引っ張られちゃうし、身体をアニメで維持しようとすると声もアニメになっちゃう、その居心地の悪い状態のまま両方を行う。確かに超じょうずな子も途中で声がアニメに引っ張られてておもしろいなーと思いました。


終わって、三浦くんが「ロロはメタとネタとベタをやってる」といって、メタは、今みたいに自分を俯瞰して演じるもの、といった説明をしてくれて、超大事なとこだったんだけど、自分も演技で精一杯で腑抜けのようになってたのですっぽり抜けちゃってるんですよね、このへんの説明が。悔しいぜ。こんどちゃんと聞きたいなー。ただ、こうもおっしゃってました。「役者が、居心地の悪い状態で演技をする。それで、役と役者が重なる瞬間がある。そういうのをロロは大事にしてる」と。あー、だから、ロロの作品ではあそこでああいう演技をしてたのね、とか、あのときああいう言い方をしたのね、とか思いましたね。つまり、マームはリフレインと運動で役者に付加を与えてるけど、ロロは身体の動きと演技の距離で役者に付加を与えている。わたしは演劇はほんとぜんぜん歴史とか知らないけど、それはもしかしたらチェルフィッチュ以降、といえるのかもしれないなーとか思いましたね。


ともかく、三浦くんが、演劇というものを心底愛して信じているということ、そして誰かを想う気持ちを心底愛して信じているということ、そういうのが改めて知れたような気がして、とってもうれしい気持ちでいっぱいになりました。ロロに否定的な表現ってないですものね。最後に「おすすめの演劇とかあったら、できるだけ見たいと思ってるんで、ぜひ教えてください」ってみんなに言ってました、三浦くん。わたしはつくづく世界を愛しているひとの表現が好きだなぁって思います。


しかし帰りに「みんなで飲んでいこうよー」とかいって「ちょっとまって、用意してくるから!」って戻っていったんだけど、「申し訳ないんだけど…おれ、これから打ち合わせらしい…」といってしょんぼりしていた三浦くんまじ萌え!