昆虫キッズのこと

昆虫キッズを初めてみたときの衝撃はいまも忘れない。この世にこんなに純粋でつよくてかっこいいものがあるのか、と思った。こちらが言葉で具現化することを拒絶するように、その生きた生命体はまぶしい光を放って音を鳴らしていた。音楽の興奮を、わたしはふたたび身体に刻んだ。




そんな、昆虫キッズのことをしばらく見に行ってなかったのは先に別のチケット取っちゃってたりとかほかのライブと重なってたりとか、そういう事情がたくさんあったというのは当然いいわけで、そんなもの予定なんてどうにでもなるんですよね見に行きたければ。どうにかして見に行くことができるんですよ大人なんだし。でも、それをしなかったのは、いつ見ても普通にかっこいい昆虫キッズに飽きたから、ですかね。昆虫キッズがかっこいいのは知ってる。わかってる。でもわたしが好きなのはわたしの知ってる程度の昆虫キッズじゃないの。わたしの予想をはるかに超えた昆虫キッズなの。好きすぎて期待値がとんでもないことになっちゃってるから新作が出ると聞いたときは嬉しいと同時に不安がせめぎ合ったし、なにがなんでもリリースまで聴かないぞって思った。実際にはwebにあがってるインタビューが謎すぎて思わず「主人公」聴いちゃったり、取材のお話をいただいて発売前に聴いたりしてしまったんですが。



でもね、これが、ほんっとーーーーーーーに名盤でさあああああああああ。ほんっとーーーーーーーに名盤です。





とにかく曲のひとつひとつが強い。強いというのはメロディの強さ(ポップさ)もあるし言葉のエグさと優しさ、そのフックの強さもあるし、しっかりとダンサブルなリズムの強さもある。ピアノの伴奏も美しい。5年間かけて、前作からは2年ちょっと、昆虫キッズのメンバーの特技やクセをある程度自覚して、そのよき部分を全部発揮した、というようにも思える。曲ひとつひとつがしっかり立ってポップなのに、そのなかに野心を忘れないやんちゃなアティテュード。でも、なによりも感動したのは、「自分でもどういうことをやってるかわからない。ロックなのかどうかもわからない」と言っていた高橋くんが、自分の意思でもって、明確に、「伝えたい」ということに挑んでいる姿。






「まず、この作品を作るに辺り自分の中で大きな変化があった。
曖昧ではなく明確な表現を他者に伝えたい、そしてそれは必ずいつも以上に自分の言葉で伝えたいということだ。」





と、いうライナーノーツがこのCDには入っています。何度インタビューをしてきても決して話してくれることなかった高橋くんの、本当の言葉が、この作品には詰まっている。わたしはそれだけでもう泣きそうだ。








そんなわけでレコ発ワンマン、なんとシャムキャッツ/ホライズン山下宅配便やザ・なつやすみバンド/oono yuukiのライブとかぶってるという呪われた日程だったんですが(東京こわい)、そこそこにお客さんも入って、とってもたのしい本当に素晴らしいライブでした。アルバムでみせた音楽性の豊かさバンドの状態の良さはちゃんとライブにも満ち満ちていて、1曲目から鬼気迫る演奏で、てか1曲目「街は水飴」いきなしトチッたんですけどね(笑)。で、高橋くんが「ちょっと!」とかいってギターを置いて「SE!」とか言ってアンプの裏に(笑)。その指示で一度退場するメンバーたち。もう一度GEISHA GIRLSの「少年」がかかって昆虫キッズ登場、1曲目「街は水飴」からリスタートする、という流れ。でも、のっけから凄まじいグルーヴと色気で客を挑発しては、ふっと抱きしめるような優しさで、音楽が五臓六腑を駆け巡る興奮を持続させていました。一度作品にしたものは、自分の手から離れていく、というのを受け入れて、なのか、あきらめて、なのか、CD盤の歌詞にまったく捉われず歌っていた高橋くんが、しっかりと歌詞をうたっていた。まあ歌えてないのもあったけど、でも、彼は本気で「明確な表現を伝えたい」を必死に実践しようとしているんだなぁと、なんだか目頭が熱くなったなぁ。



しかし本当にみんな楽しそうだった。最前のスーツ着た男の子とか「シンデレラ」の♪えーおおーのとこでめっちゃ高ぶってて、最後の「おーえおえおー」で不格好にプチャヘンザしてて、だけど「えおー」が歌いきる前に下げちゃってて、彼はきっと普段は絶対にやらないであろうプチャヘンザを、この曲で思わずやらずにいられなかったんだろうな、とか思ったら、彼のことをうしろから抱きしめてあげたくなるような、そんな気持ちになりましたねー。かにみそさんの狂ったようなダンスとかも熱情ほとばしっててやばいです。まさに求愛のダンス。そんななかで、高橋くんが「ずっと演奏してるとさ〜、ひとりぼっちみたいな気持ちになってさびしくなってくるんだよ〜」とか言いながらMCを挟んで客席とコミュニケーションとろうとしてくるのめちゃくちゃエモかった。想像ですけど本人たちは、おそらくMCは最小限に抑えて曲だけをずっとやってクールに帰っていく、ということをやろうとしてたんじゃないかなーと思うんだけど、人一倍サービス精神旺盛かつ人の10倍ぐらい寂しがり屋な高橋翔さんが、たまらずMCを始める姿に、なんかグッときちゃったよね。しかもフォローも含め佐久間さんがMCに乗っかろうとすると「お前やめろ!!!」と言ってそれを制止し、「内輪なバンドだと思われるだろ!!」と怒る高橋くん(笑)。お客さんへの感謝の言葉を述べて「俺いまこんなに流暢に話せると思ってなかった〜」と発言して「お前今日一度も流暢に話せてねぇよ!」と佐久間さんに突っ込まれてるのもくっそ笑いましたね。冷牟田くんが自分の半径1m以内にある危険物または壊れ物をはじっこに寄せてる様子みて高橋くんが「お前…暴れるつもりだろ!!」とか突っ込むのもめちゃくちゃおもしろかった(笑)。




感想の後半がMCだけになってますが、でもあの雰囲気を含めて昆虫キッズって最高!それでいて、こっちが想像できないすごいライブをみせてくれるんだから、本当に昆虫キッズってかっこいいぜ!大好き!