二階堂和美さんのこと


ニカさんの新作、まだちゃんと聴き込んで呑み込んでいないのだけど、それでも一聴して「わあ、ニカさん歌すんごいうまくなったなあ」と思いました。『二階堂和美のアルバム』好きなんだけど、うーん、ニカさんのボーカルってもっとすごくないかい?と思う部分も実はあって。ブログで何回か書いてますが、やっぱりcompare notesから出たUSツアーのライブアルバムが好き。ニカさんの奔放で自由でキラキラした歌の生命が、盤に刻まれてる。そういう意味では、ようやくニカさんは、レコーディングとして「歌う」ことに慣れてきて、そのニカさんの呼吸をきちんと録音できるエンジニアの方と出会ったのかしら、と思いました。二階堂和美の歌、という意味で、今作は、存分に、十分に、その凄みを真空パックしているような気がします。少なくとも「ライブの方がすごい」とは思わなかったし、ライブでは見れないニカさんの歌のやさしさやしなやかさあたたかさ、母性、そして歌う喜びに満ちた表現が色鮮やかに香っている。曲ももちろん素晴らしいし、演奏陣の方々との相性もすごくよいのだろうな。特に在住地の広島で黒瀬みどりさんと出会ったことは、ニカさんの音楽を日常と地繋ぎに育ませたのではないかと想像します。


てなわけで二階堂和美@葉山ブルームーンのライブをみにいく。


彼女のライブを見てるとほんとに音楽と相思相愛っていうか、音と戯れる天使が、音に愛されて、音と一体になって、体中をふるわせて音楽を鳴らすってイメージで。そういう話をご本人にしてたら「確かに、ハミングをしながら音の粒子が集まる部分を探して、自分の声と一緒にそれらをぜんぶ解放するみたいなイメージがあるかも」みたいなことを、けっこう昔だけどおっしゃっていて、「ああ、ニカさんは本当に音と戯れていたんだなあ」と思ったことがある。ニカさんの歌は音楽から愛されて祝福されて生まれる愛の伝道なのですわ。生命力そのものなのですわ。歌うことの楽しさ音楽を奏でる喜びを体中ぜんぶで解放するそれはもう、赤子の鳴き声のようなパワーに溢れているのです(表現の方向性がポジティブに満ちてる、ってわけではないです。あくまで歌の凄みって意味で)。


この日のニカさんのライブは、ちょっとマイクとの相性がよくなさそうにみえて、でもPAはまあ海の家だししかたないかと思う部分もあり(前回みたときはそんなこと思わなかったけど)、背後から鳴る波の轟音の生命力を超える瞬間がみえなかった。途中でタオルで顔を覆って「きゃー!わー!」って叫んでたのをみると、もしかしたらご自身も声の違和感を感じてらしたのかもしれない。ニカさんの歌は、あらゆる生を味方にしてそれを呑み込んでくような凄みがあるから、こういうライブを見るのはとてもめずらしいです。すごく盛り上がってたけど、「えー!二階堂和美ってこんなもんじゃねえだろ!!!」てじりじりしていました。一緒に行った人がニカさん初見で「あまり響かなかった」と言ってておれはくやしい。


まあでも、翌日のNHKビートのライブはすこぶる良かったそうなので(バリカクつぶやきによる情報)、単にこの日の状態、気温、PAあらゆる条件が悪かっただけみたいです。プロジェクトFUKUSHIMAのライブもよかったみたいだし、「こないだの糸井氏のustもよかったやん」て、map/compare notesの小田さまに指摘されました。わお、みてませんでしたすみませんでした!


なんかこれ勝手な詮索ですが、やっぱり3/11以降のいろんな思いが、二階堂さんにもあるに違いなくって、それは今回のアルバムにもずいぶんみてとれるし、アルバム自体を出すべきか、出さないべきか、そうとう悩まれたようだし、いろいろいろ、音楽を生み、歌っていく立場としてやっぱり意識せざるを得ないいろいろな部分があって、そのことでシリアスになりすぎちゃって、ニカさんが才能を発揮しきれなくなっちゃったりしてるんだとしたら、ニカさんが歌う喜びを解放できなくなっちゃったりしてるんだとしたら、ちょっとやだなあと思ったわけですよ。邪推ってやつです。てかどんだけ上から目線。


「久しぶりに新曲ができたんで、歌っちゃおっかな!えへへへ」みたいな感じで、もう何年も前にネストで披露した「めざめの歌」。


この世のすべては どうにもならない
それでも生きる
わたしは生きる


この曲を聴いたときにわたしは、「“歌手”二階堂和美は、シンガーソングライターとして、再びひとりで歩み始めるのだなあ」と思ったものです。やっぱカバーよりも鴨田先生の曲よりも、ニカさん自身の曲がいちばん好きだ。ニカさん自身の歌を歌うニカさんの歌が好きだ。



二階堂和美「めざめの歌」
途中のハミング、二胡みたいな音してます。



二階堂和美「あなたと歩くの」
これぞ二階堂和美の真骨頂!黒瀬みどりさんとのデュオです。ニカさんほんっと楽しそう!キュート!黒瀬さんいつもにこにこしててかわいいな〜。



二階堂和美「萌芽恋歌」
風の音がバタバタ、子供ちゃんの声が聞こえているなかでのアカペラ。有無を言わさない歌声。ほんとに素晴らしいです。


いろんなことがたくさんあって、それが現実逃避の一環だとしても、それでもわたしは音楽が聴ける環境にいれることをありがたいと思う。ニカさんの歌が聴ける時代を幸福と言いたい。「歌はいらない」と痛感しながら、それでも歌わざるを得ない、二階堂和美というひとの歌は、もしも電気が使えなくなっても、生音でもアカペラでも、きっとずっと響いて、みんなのこころに灯をともすよ。



■二階堂和美 ワンマンライブ にじみの旅
2011年
10月13日(木)小樽ぐるぐる
10月14日(金)札幌PROVO
10月15日(土)渋谷WWW
10月16日(日)宇都宮kcucha rismo
10月21日(金)阿蘇windy umbrella
10月22日(土)佐賀CIEMA
10月28日(金)姫路ハルモニア
10月29日(土)塩屋旧グッゲンハイム邸
10月30日(日)京都UrBANGUILD
※チケ発が今週末8月20日(土)からですよっ