昆虫キッズは、わたしに遅すぎる青春をもたらしてくれた。
だけど、昆虫キッズ、と口に出すたびによぎるいかにも神経質そうな目付きの悪い若者が、いつか消えてしまったようでわたしは昆虫キッズのライブに足を運ばなくなったのだ。
もちろんひらすらクールでシリアスな彼らの音楽も最高にかっこいい。
だけど、悪あがきとモラトリアムとロマンで形成された彼らのファンタジーは、そりゃもうむせ返るほどまぶしくて羨ましくてたまらなかった。
未熟な時代の永遠を真空パックするという意味で、昨今のアイドルブームに音楽、とりわけロックという方法で太刀打ちできるのはおそらく彼らだけだろう。
彼らには魅力しかなかった。狂おしいほどに美しかった。自分がもう遠く手放してしまった瞬間を、彼らはぜんぶまとっていた。
夢中になった。高橋くんの言葉をぜんぶ知りたいと思った。いつか30歳になったときの高橋くんの言葉を知りたいと思った。


活動終了、という話を聞いたとき、悲しいとは思わなかった。
目も眩むような刹那にいた彼らはもうモラトリアムなんかに留まってないんだから。
だけど、音楽的な意見の相違とかが理由だったら本当にださいし嫌だなと思った。


昆虫キッズには大人になって当たり前に迎合なんてしてほしくない。高橋くんの決断には希望がある。だから昆虫キッズが大好きなんだと思うんだよ。昆虫キッズが好きだよ。昆虫キッズが好きだということが誇りだよ。





勝手なことしか言ってないけど、そんなことを、「活動終了」の文字を見た5秒ぐらいで思いました。